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2007-12-25 Tue 19:05
●これらの作品は、天才JUNKMAN氏が巨大娘普及委員会に投稿された名作小説「女神」にインスパイアされ、その圧倒的な世界観を私なりにイメージ化したものです。是非とも全文を読んだ上でご覧下さい。(文字化けする場合は、エンコードを日本語に設定し直せば直ります。)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ![]() 都庁の入口は、いつもにもまして群衆が殺到していた。彼らは、何か都庁の上の方を指さして騒然としている。そのうえ、その前では、どうやら警察が立ち入りを制限しているようである。何だろう?でも、気を取られている暇はない。亜里沙は急いでいるのだ。なんてったって今日のゲストは淡島知事である。亜里沙は、人混みをかき分けて前に進み出て、張り渡したロープをくぐり、都庁の建物の中に入った。たちまち、警戒中の若い警官がやってきた。 ![]() 「誰ダ、オマエ?何シニキタ?」亜里沙は思いっきり動転しながら、それでもちょっと見栄を張って自己紹介した。「私は、歌手で、女優の、石川亜里沙です。日本では、アイドルと呼ばれています。」いらない見栄は張るべきではなかった。彼らはすぐに知らないラテン系の言葉(スペイン語かな?と亜里沙は思った)で相談を始めた。「アレナンディオシオレソナタ、シニョアセレペリャメーナ(歌手で女優というからには、一般大衆にも良く知られている人物だろう)。」「セあいどるレソンドランツィオナスタニーニョ(アイドルとは特に人気が高い場合に使われる言葉だ)。」「イグラツィア、コメンシエステ(これは都合が良い。示威行動には最適だ)。」亜里沙は窓際へ連れて行かれた。テロリストの一人が機関銃で窓ガラスを打ち破り、亜里沙を外に押し出した。 ![]() 声にならない悲鳴が喉をついた。やっぱり。やっぱりそうだったのか。私は死んだんじゃない。そのかわり、巨人になってしまったのだ。でも、どうして?どうしてそんなに大きくなっちゃったの、私? (中略) まずい。亜里沙は全裸である。慌てて立ち上がり、後ろを向いて、都庁のビルにぴったりと身を寄せた。大きい。身長160メートルの巨人になった今の亜里沙をもってしても、都庁はなお大きい。凹型の引っ込んだ部分でも亜里沙の頭のてっぺんくらいある。まして最上階には背伸びしても手が届きそうにない。そうだ、また重要なことを思い出した。最上階だ。私はあそこから墜ちたのだ。あそこには私を突き落としたテロリストたちがいるのだ。 ![]() 亜里沙は半分崩れた新宿都庁に背をもたれかけ、腰を下ろしていた。股間はなんとか隠しているものの、もう胸は隠す気もなくなってしまった。あーあ、脱ぐのは主演映画まで待とうと思っていたのになあ。幸い、京王プラザホテルの陰になっているので、新宿駅からはあまりよく見えないわね。良かった。こんな姿が大勢に見られたら大変よ。亜里沙は、さっきの大立ち回りが、報道管制がしかれるまで全国に実況中継されていた事実を知らない。 ![]() 「そこは高層建築の密集地ですので、立ち退いていただかないと危険です。新たな建築物破損を招く公算が大と考えられます。既に被害総額は莫大であり、石川さん個人の賠償可能範囲を遥かに超えております。それに、いつまでもそこにいては倒壊した都庁付近の回収作業が始められません。どうぞ。」ぐうの音もでない。 「それじゃ、せめて、何か着るものはありませんか?」 「ありません。どうぞ。」 けんもほろろであった。 亜里沙は受信機のナビゲーションに従って恐る恐る歩き始めた。ちょっと前屈みになって、股間を両手で隠して歩くしかない。あー恥ずかしい。とりあえず、甲州街道に出なくては。それにはこのビルの間をすり抜けるのね。ちょっと失礼。 ![]() 新宿モノリス、NSビル、KDDビルの上階にいた人々は、息のかかるほどの近さまで寄ってくる巨大な少女の顔に仰天した。でも亜里沙には悪気はない。コンタクトレンズがないので思いきり顔を近づけないと距離間隔がつかめないのだ。ごめんね、脅かすつもりはないのよ。こうやって顔を近づけているから無事に歩けるのよ……でもないか。なんかKDDビルが傾いちゃったような気がする。近くを* ったとき、ちょっと地盤が沈んだからなあ…。大丈夫かしら?倒れないわよね?怖いから振り返らないでおこう。 ![]() 新宿駅西口は騒然とした。通り過ぎると思われた巨大少女が、突然こちらに向かって歩いてくるのだ。そんな馬鹿な。新宿駅には避難命令は出ていなかったはずなのに。でも、確かに足音が近づいてくる。そして、その姿が近づいてくる。大きい。近くで見ると更に大きい。どうする?もう逃げる間はないぞ。下手に飛び出しても踏み潰されるだけだ。とりあえず建物の中に逃げ込もう。人々は慌てて車を乗り捨て、新宿駅構内にかけ込んだ。 ![]() ぱんぱんぱん、という連続花火のような音で亜里沙は目醒めた。もう日は昇っている。何かしらと思って身体を起こそうとした。 ![]() 亜里沙は、彼らをのせた右手を左の乳房の上にあてがった。「さ、降りなさい。」乳房に乗り移れ、ということらしい。この娘は、大の男に向かって乳房の上に載れというのか。さすがに彼らも屈辱のあまりに身がこわばった。「あらら、素直だから潰さないであげたっていうのに、今度は言うこと聞かないの?。じゃ、ぷっちんしちゃおうかな。」 ![]() 亜里沙にとって東京はこびとの住むミニチュアの街である。全てのものは玩具にすぎなかった。だが、数ある玩具の中でも、面白いのは動く玩具である。今、動き始めたばかりの電車など、拾い上げて下さいと言わんばかりであった。亜里沙はしゃがみ込んで、いちばん後ろのの車両を握りしめた。手の中で、ぐしゃりと金属のひしゃげる感覚がした。そのまま片手で列車をつかみ上げた。前から3両めと4両めの間の連結が外れ、前3両は地面に激突し炎に包まれた。 ![]() 亜里沙の左手の上には、まるでキャラメルでも集めているかのように、戦車が無雑作に積み上げられていった。何段にも重ねられているため、中の搭乗員は脱出することができない。 「32いー、33ー、34いー、35おー、」そこまで数えたところで、一台の戦車が手のひらからこぼれ落ち、120メートル下の地上に激突して爆発炎上した。「はい、答えは34台でした。では、まとめて握り潰します。」 亜里沙は右手を握りしめた。きりきりという金属のひしゃげる音に混じって、120メートル下の地上からでも、はっきりそれとわかる断末魔の悲鳴が聞こえた。 ![]() 「こびとのみなさん。こんにちわ。石川亜里沙です。」亜里沙は足下を見下ろして、群衆に語りかけた。「私はこの世界の女王さまになりました。さあ、これからみなさんは、新しい女王さまのために、お祝いのパレードをするのです。」命令に抗うという選択肢はない。銀座を埋め尽くす群衆の動きに、はっきりとした流れができた。彼らは、まずJR銀座駅周辺に集結し、そこから晴海通りに沿ってそびえ立つ亜里沙の両脚の間をくぐり抜け、築地へ進んでいった。流れに逆行するものは誰もいない。流れが滞ることが何を意味するか、誰もがよく知っていた。 ![]() 「マーク、我が軍が彼女に総攻撃をかけたとすると、こちらの被害はどの程度になるだろう?」「日本の自衛隊は壊滅させられたんだ。かなり甚大な被害を覚悟しなきゃならないよ。」「……それならば、答えは一つだ。」大統領は国防長官の方に向き返った。「核を使おう。」 (中略) 朝がやってきた。かつて東京であった場所は、巨大なクレーターに姿を変えていた。全ての存在は焼きつくされ、吹き飛ばされ、塵芥に帰していた。ただ一つ形をとどめた存在、亜里沙を除いては。 ![]() 亜里沙は大きく深呼吸した。身長640メートルの巨大な身体が、朝日に映えて黄金色に輝いた。しかし、その壮麗な姿を地上から仰ぎ見るべきこびとたちは、周囲にはもういない。見渡す限り茫漠とした荒野である。 奇妙なことに怒りを覚えてはいなかった。むしろ、これから始まることへの期待でときめく思いを抑えきれなかった。私に対してこんな失礼な振る舞いをすることは、断じて許されない。彼らは知らないのだ。教育してあげなくてはならない。大勢の人々の恐怖と、畏敬と、憧憬の入り交じった視線を浴びながら、彼らに罰を与えてあげなくてはならない。ゆっくりと時間をかけながら、彼らに心ゆくまで絶望と、屈辱と、無力感を味わわせてあげなくてはならない。このような愚かな行動を起こすものが二度と現れないように、私の巨大な力を、無敵の力を、全能の力を、余すところなく見せてあげなくてはならない。そして、全世界の人間が、私の足下にひれ伏して、私に服従し、私の命令の下で、幸せに暮らせば良いのだ。それが、人智を超えた存在である私の務めなのだ。 いつしか、亜里沙は笑っていた。大きな声で笑っていた。高らかに、厳かに、その笑い声は、荒野にこだまして、全世界へと響きわたって行った。 渚に着くと、亜里沙はもう一度深呼吸した。そして、朝日の昇る太平洋に向かって、一歩ずつ踏み出していった。 |














